お知らせ
令和2年度第73回卒業証書授与式が無事終わりました。YouTube配信という初の試みもなんとか成功できたようでほっとしています。
祝辞や謝辞をいただいたPTA会長、同窓会長、役員の方々、そして出席いただいた保護者の皆様、本当にありがとうございました。
困難な状況の中で参加者を限定しての卒業式でしたが、卒業生は皆とてもいい顔をしていました。不安と闘った一年を乗り越えて卒業までたどりついた自信にあふれた顔つきでした。送辞、答辞も素晴らしかったです。

卒業生に幸あれ!

式辞
 秀麗の地、利根沼田の自然はあくまでも美しく、困難な状況の中でも営みを変えることなく今年も新たな春が訪れました。この佳き日に、星野同窓会長、小林PTA会長、保護者の皆様のご臨席を賜り、ここに群馬県立沼田高等学校 第73回卒業証書授与式を挙行できますことは、本校にとってこの上得ない喜びであり、心より感謝申し上げます。
ただ今、卒業証書を授与されました全日制155名、定時制11名の皆さん、卒業おめでとうございます。あわせて、保護者の皆様、ご子息ご息女のご卒業、誠におめでとうございます。心からお祝いを申し上げます。
 今、皆さんの脳裏にはこの三年間の経験がそれぞれのかたちで浮かび上がっていることでしょう。一年次には沼高祭を大いに盛り上げ、皆さんにとっては高校生活で一度となるいい思い出となりました。二年次には定期戦で奇跡的な逆転勝利を果たし、沼高プライドを守りました。秋には首里城の焼失というアクシデントに見舞われながらも楽しく、また戦禍に思いを馳せる沖縄修学旅行を経験しました。更に本校が校是とする文武両道も見事に体現し、全日制、定時制ともに部活動では、県総体優勝・インターハイ出場・入賞等を筆頭に、輝かしい実績を残してくれました。
 そして皆さんの三年次はかつて誰も経験したことのない苦難・「コロナ禍」に見舞われました。至上最高の文化祭にするはずだった沼高祭、運動部員が三年間を費やして目標としてきた高校総体・インターハイ、文化部の総合文化祭・五校祭、その他多くの行事を奪われ、その無念さは筆舌に尽くしがたいものであったでしょう。そのつらさは無気力や自暴自棄につながっても当然といえるほど大きなものであったはずです。しかし私が見る限り、沼高生は驚くほど冷静にそして前向きにその苦難を受け止めました。代替え大会に全力で挑む生徒、進路実現のための受験勉強に切り替える生徒、クラスマッチを全力で盛り上げようとする生徒、三年生のそのような姿に私は心から感銘を受け、深い敬意を感じました。皆さん、このコロナ禍の高校三年時をこれほど前向きに過ごした自分自身を褒めてあげてください。                     
 さてこの「コロナ禍」と言われる社会状況がいつまで続くのか、今は誰にもわかりません。私たちが手を取り合い、抱きしめ合い、気兼ねなく大声で歌ったり笑い合ったりする時代がいつ訪れるのかわかりません。ただ一つだけわかっていることがあります。それは「私たちは変わらなければならない」ということです。はっきり言えばこの一年、人類は今までの数々の失敗を思い知らされました。
 感染症に対する社会の脆弱さ。行政の対応の遅さ。教育現場のデジタル化の遅れ等、数え上げればきりがありません。しかし、失敗は決してマイナスしか与えてくれないわけではありません。
 私は今まで皆さんに失敗を恐れずチャレンジして欲しいと言い続けてきました。それは人類に取っても同じです。失敗からは新たな成長が生まれます。我々にとって大切なのは失敗から学ぶことなのです。                     ‐
 まず何よりも人間の無力さを思い知り、自然を畏怖する謙虚さを思い出すことでしょう。科学技術により自然は支配できるものという思い込みが間違いであることは、先の震災によっても今回のコロナ禍によっても嫌と言うほど思い知らされました。自分の無力さを知ることにより、だからこそ謙虚さを持って、真理を求め、一層の理想を追う努力を怠らない精神が大切なのです。
 また、人類の精神文化は我々が考えている以上に未熟な成長しか遂げていなかったという失敗も明白になりました。感染症への恐怖から来る他人への攻撃性、差別、誹謗中傷、ワクチンの奪い合い等、人間の醜さ、幼さが浮き彫りになる一年でもありました。我々は本気で「民主社会に生きる基礎的実力」を育まなければならないと痛感させられたとも言えます。
 今を機に我々が民主社会や人権についてもっと理解を深めれば人類の未来はより明るいものになるでしょう。そのように考えてくると、長い伝統の中で沼高が目指してきた、校訓、教育目標、五常の教えは一層輝きを増してきます。        ‐                     
「五常の教え」の利他的な精神に基づき、謙虚に真理を求め、誰もが幸福に生きられる和親共同の社会を創るという理想を、追いかけることが何よりも大切になるのです。    
 卒業生諸君、この沼高生活三年間で君たちの「基(もとい)」はできたはずです。しかし人生は迷いの連続です。多様な価値の中で何を選択すべきか、揺れ動く時もあるでしょう。他人や社会を恨めしく思う日もあるでしょう。そんな時は是非、沼高で学んださまざまなこと、謙虚に真理を求め他者を尊重する精神を思いだしてください。自分達はコロナ禍という逆境の中でも前向きに高校生活を過ごした伝説の学年だという自負を持ち続けてください。失敗を、恐れず挑戦を続け、何度失敗してもそこから何かを学び取り、前を向いて立ち上がる沼高魂を持ち続けてください。必ず未来は開けます。  
 皆さんはアフターコロナ、まさに新たな時代を切り開いていく世代です。青春の志を成し遂げるとともに、利根沼田の、日本の、世界の一層幸せな明日を築きあげてくれることを、期待します。                               
 結びになりますが、沼田高校職員代表として、皆さんの人生が自他の幸福に満ちあふれたものであることを心より祈念して式辞といたします。

                   
令和三年三月一日  
                                 県立沼田高等学校    校長 丸山 正